【vol.4】実施レポート:とやまの新+継 地域の仕事たち①〜井波の新企業訪問

更新日:2019/10/09 21:10

未来の移住者のためのスペシャルカスタマイズツアー【とやま移住旅行】。4年目となる今年は、全部で3回のツアーを開催!

1回目のテーマは「新+継」…つまり起業&継業です。
Uターンして自分のお店を立ち上げた方や、新しい働き方にチャレンジする企業、昔ながらの商店街のお店を継いだ人などを訪ねました。今回巡ったのは県南西部に位置する南砺市・砺波市。庄川が育んだ美しい砺波平野が旅の舞台です。九月最後の週末は、どの町を歩いても金木犀が香ります。

井波は瑞泉寺の門前町にあたる「八日町通り」

 

2日間を盛り上げてくれた松本八治(はつじ)さん

2日間のガイドは(株)まとめる専門家の松本八治さん。自身もUターンを経験し起業。南砺市城端で、マネジメントやPR、ウェブサイト制作など、多様な事業を通して地域や企業の課題解決に取組んでいます。

さて、1日目は南砺市へ。
平成16年に8つの町村が合併して生まれた南砺市には、それぞれの町の特徴があります。
富山駅からバスに揺られること約1時間。まず向かった井波は、200人の職人が住み、人口の1/40が彫刻師という珍しい木彫りの町です。

「見学はご自由に」と書かれた工房。入ると、木の匂いに充ちた部屋で彫刻師が作業をしています

浄土真宗の古刹「瑞泉寺」近く、職人が鑿を叩く音が響く伝統的な町並み。(株)コラレアルチザンジャパンさんはそんな通りにあります。
社長の山川智嗣さんは富山市出身。奥さんの山川さつきさんは兵庫県出身です。2人とも建築家ですが、彼らの会社は、一概に建築事務所とは言えません。

彼らが進めるのは、“クラフトの美を生かしたプロデュース”だそう。

左から山川さつきさん、山川智嗣さん、コラレで働く大木賢さん

まずはコラレのメンバーでもあり、自らも写真家として活動する大木賢さんの事務所で会社について伺いました。

木彫り職人の町である井波の代表的な商品は、立体的な彫りが特徴の欄間です。しかし、ライフスタイルの変化により、座敷や欄間のある家は激減しました。山川さんたちは、木彫りの技術を現代の暮らしに活かすすべを模索。“職人に弟子入りできる”宿の運営や、井波を案内する観光アプリの制作、職人とともに作る食器の開発、建物のリノベーションなど、業務内容は多岐にわたります。

コラレの事務所と同じ通りにある大木さんの写真事務所。もともとは空き屋でした

会社のメンバーも正社員というより「業務委託」。「お抱え職人」として、木彫刻家や仏師、漆芸家などが名を連ねます。
大木さんは、週に4日はコラレの社員として働き、竣工写真などを担当。収入を確保しながら、残りの3日で自身の活動をしているそう。働く場所も、コラレの事務所や写真館などどこにいても問われません。

「たまたま、『写真を撮りたい』と思っている大木君に出会ったから、こういう形態になりました。他にも、食に興味がある方が来てくれたのでカフェバーを始めたり。僕らはプレイヤーファーストと呼んでいます」と智嗣さん。

新たな感性で富山県の風景を切り取る大木さんの写真。田植え前、水田が水鏡になる、散居村の最も美しい季節です

大木さんの写真事務所を離れ、コラレの事務所まで裏通りを歩いて行くことに。
「実はこの通りを『銀座』にしようと思っているんです。もう、パン屋さんにすることが決まっているビルもあるんですよ。あとは『パンを作りたい』という人が来てくれるだけです」

パン屋さんになるビル。「まあ、この町にパン屋さんがないので、僕らがほしいというだけなんですけど…」

「3年後には銀座と呼ばれるようになります!」という裏通り。細いのに、地下水で雪をとかす「融雪装置」がしっかりついています

少し歩くと、突如として足元からオシャレな空間が。

あれ?何だかおしゃれな予感…

コラレの事務所であり、“職人に弟子入りできる宿”「Bed and Craft」のラウンジかつ、カフェバー「nomi」である建物に到着しました。

町中に突然あらわれるしっとり艶やかな空間に、参加者の皆さんも驚き。どこからともなくよい香りも漂ってきます

建物内には表通りと裏通りをつなぐ路地が。地元の人も通っているといいます

Bed and Craftは、ラウンジの他に現在5棟の宿があります。それぞれ全て古民家や古い料亭をリノベーションしたもので、1日1組限定の貸し切り宿。空間はもちろんのこと、器やカトラリーも職人の手で作られたものを使用。宿泊者しか見られない作品もあるそうです。さらに職人に“弟子入りできる”ワークショップも受け付けています。

「井波は観光地ではなく『産業地』。この町には瑞泉寺という大きなお寺があって、普通だったら門前町はお土産屋さんばっかりになってしまうところが、そうなっていない。工房が立ち並び、営みがあるんです。
かといって、いきなり観光客が『こんにちは〜』と工房に行って話を聞く訳にはいかない。では宿泊して、さらにワークショップを体験してもらい、その間に話を聞いてもらおうと、このような形になりました」

nomiでは、木彫刻職人が削った木くずで作る薫製料理を提供しています。職人さんから木くずをもらい、お店のビールと交換するんだとか

 

プロデュース・販売しているお皿。この1枚に挽きもの・彫り・塗りなどいくつもの工程が詰まっていますが、全て井波内で完結します

職人さんをはじめ、人の力をつなげることによって、様々な方面にチャレンジしている山川さん夫妻。宿ができ、事務所ができ、カフェができ…といった新しい動きを、誰よりも地元の人が喜んでくれているそうです。井波には彫刻の学校があるため、町は外の人に対してウェルカムなんだそう。そもそも井波に彫刻の技術を伝えたのは、京都からやってきた1人の彫り師だったといいます。
「職人の町というから、とっつきにくいのかと思っていたら、その逆だった!」と、参加者の皆さんも驚いていました。

智嗣さん、さつきさん、大木さん、貴重なお話を、どうもありがとうございました!

 

さて、バスに乗り込み5分。
次の目的地は「metio」(メティーオ)。フェアトレードやオーガニック商品を扱う、小さなお店です。
田んぼの中にぽつぽつと建物が見える散居村の中、地元ハウスメーカーが持つ宿泊施設「秀夢木楽館」の一画にあります。

店主の竹内さんが出迎えてくれました

店主の竹内真理子さんは、富山県射水市出身。一度富山を出て石川県へと行きますが、そこでフェアトレードに出会います。

フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善、自立を目指す運動のこと。

「ものが持っているストーリーの深さに魅了されて…。富山にも、フェアトレードの製品を売るお店があったらいいなと思い、金沢のショップで修行したあと、富山に戻りました」。

富山に戻った竹内さんは、富山県定住コンシェルジュの職を得て県内を回りながら、移動販売のお店として「metio」をスタートし、県内各地のイベントに出店。定住コンシェルジュを退職後、満を持して店舗を井波にオープンしました。

射水市出身なのに、なぜ井波だったのでしょう?

「コンシェルジュの仕事を通して、県内の色々な場所を見る機会がありました。射水も呉西(県西部)なので、西側がいいなというのが理由のひとつ。もうひとつは、井波が彫刻の町だったからです。フェアトレードも、手仕事の品がすごく多いんですよ。相通じるところがあるなと感じて、井波にしました」

こぢんまりとした店内ですが、食品から基礎化粧品、衣類まで幅広い商品が

住まいも井波に移した竹内さん。「自宅はもっと町なかにあります。通勤は車ですが、町なかのほうは歩いていける距離にお店があったりして、意外にも便利ですよ」と教えてくれました。

井波で暮らし、お店を守りながら、県内各地のイベントやマルシェへの出店も続けています。

布製品は、どこか異国情緒が漂う色柄が魅力

ここで1日目午前の部が終了!すでに盛りだくさんの内容でした。
このあとは3班に別れてランチ。井波の町中を巡るチーム、町を離れて山間のほうへ向かうチームがありますよ。

ランチも張り切ってまいりましょう!